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ホスピタルシアタープロジェクト

 毎回逃さずに観に行きたい大好きな劇団があります。障がい児向けの多感覚演劇を作っているホスピタルシアタープロジェクトです。本当に偶然なんですが、代表の中山夏織さんのお家がうちから徒歩一分か二分のところにあり、よく三児連れでわちゃわちゃと道を歩いていると、いつも声をかけて下さいます。昨日はそんなホスピタルシアター新作の公演日。三姉妹を連れて新宿区にある「シャロームみなみ風」という会場へむかいました。

 

 唐突なものが苦手な自閉症の子どもたちにむけに、事前に「お芝居にこんなキャラクターがでてきて、こんなことをするよ。」という大まかな流れが写真つきのファイルになってメールで送られてきます。そして、会場は入り口部分のスペースにも子どもたちが触れることのできる作品に関連した小道具などがおいてあり、ゆるやかに現実と物語の世界を繋いでいる。ここで子どもたちは一人一人写真を撮ってもらうのです。長女と次女は3回目の観劇。ついたとたんに「あ!これ知ってる!前見たよね?」とこの劇団独特の観劇スタイルを思い出したよう。1歳11ヶ月の三女は私にひっついて場所見知り。泣きはしないけど、警戒している。


 本物の楽器がたくさんあるコーナーへ長女と次女は直行し、ピアノを弾かせてもらったり、楽器を自由に触らせてもらいました。三女は光る丸いライトのような小道具を握りしめて楽しそうに転がし始めました。座席というのもあまり決まっていなく、広いスペースに人工芝の絨毯が所々しいてある他、ソファ席も。観劇人数は5組ほど。ぎゅう詰めでないので子どもたちが自由に歩き回れる仕組みです。そうこうしているうちに、音楽がはじまり登場人物がゆったりと出てきました。


 0から3歳も対象にしている劇団バナナでも、言葉よりも感触や色、音、表情などを重視しています。そこは共通しているのですが、この劇団では演者が毎回ものすごく近くまで来てくれます。そして、子どもたちは前をむいてる必要もないし、不安に感じたらステージから離れて入り口の方の部屋にもどってもいいのです。全体としてストーリーもあるけれど、シーンごとに演者が子どもたちが触れる小道具をもって一人一人に寄り添ってくれる。飛び出す仕掛け絵本みたいな感じ。


 演者が来てくれると少し緊張するけれど嬉しいものです。物語の中に私たち自身も取り込まれている気分になります。娘たちもそんなインターラクティブな演出が大好きで、演者から差し出される様々な小道具をつかってストーリーの中で遊び始めました。色とりどりの花輪、水を含ませた布のしぶきを浴びたり、木や木の実のパラパラコツコツした音を楽しんだり、日常のありふれた感覚が”演劇”というセッティングを与えられただけで、こんなにも詩的なものになるのかと驚かされます。子どもが道ばたにしゃがみこんで小さな虫や植物を観察するような、ささやかなものに与えられる視点。障がい児に優しいものは子どもにも大人にも心地よいのです。こんな仕組みだから一回に体験できるのは6組ほどが限度。お客さんとしては最高に贅沢な経験ですが、劇団側は助成金をもらわないとやっていけないと思います。料金は親子で2000円、追加の子どもが500円で、大人1人と子ども3人で、うちは3000円しか払っていないのだから。


 それでもこの公演を必要としている人はたくさんいるはずです。劇団バナナでも障がい児向けの公演は過去何回かしていて、調布子ども発達センターで6人の子どもたちにむけて公演をしたこともあるし、港区の療育センターパオや、中野区のあぽろ、などでも公演させてもらいました。子どもたちはキラキラする物や音楽が大好き。素直な反応は演者にとってはスリルいっぱいで、ドキドキしながらも生の交流がとても楽しかったです。施設の中では理解ある先生や親に守られて生活している子どもたち。けれど生活は家と施設の往復で、障がいが重度になればなるほど劇場へ行ったりする経験はほとんどないのだと聞きました。「アートが劇場に籠るのではなく、もっと社会に出て必要としている人たちにその恩恵を届けられたら」、というのは常々思っていることで、学生時代から「劇団虹」を通して実践してきたことですが、もっとこういう活動をする劇団が増えてほしいと思います。


ホスピタルシアタープロジェクトを実施しているシアタープランニングネットワークのサイト↓

http://www5a.biglobe.ne.jp/~tpn/index2.html


 公演の最後に、冒頭で撮影された子どもの写真が1人ずつスクリーンに投影され、名前を歌ってもらえます。リアクションは色々だけど(上ふたりは恥ずかしいとカーテンの後ろに隠れました。汗)一人一人の存在が認めてもらえて、あたたかく包まれるような。演劇なのにそれ以上の交流の時間です。今、この時をともに生きている魂同士の交流。演劇の持つ魔法を感じる公演でした。







 

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